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20年ぶりの再会

小西です。

大学時代の親友と 20 年ぶりに再会した。彼の故郷・金沢で会った。

学生時代、大阪の下宿の狭い部屋で、ときには深夜、車を転がしながら、徹夜で夢を語り合った仲間だった。バブル経済の勢い残る時代。彼は「俺は実家に戻って、親の事業を継ぐ」と言っていた。夏休み、彼の故郷に遊び行ったことがあった。千里浜、第七餃子、兼六園、金沢城、温泉、彼のお母さんはサザエのつぼ焼きで歓迎してくれた。彼は自慢気に金沢案内をしてくれた。目を閉じて煙草を吹かすと、いつもポケットに片手を突っ込みながら煙草を吸う彼の姿がまぶたに浮かぶ。「どうしているのだろう」「元気にしているかな」。この 20 年、いつもどこかで親友のことが気になっていた。

最後に会ったのは、結婚後の新居に結婚祝いで遊びに来てくれた 20 年前。別れ際にもらった連絡先を書いた紙をうかつにも失ってしまった。メールアドレスもなければ、SNS なんて時代でもなかった。
転職、独立起業、倒産、そしてまた再起をかけて起業。この 20 年、私は仕事一色で走ってきた。音信不通になったまま、時間だけが過ぎていった。先日、仕事で金沢を訪れた。彼の自慢気な顔が、金沢の街並みを背景に蘇ってきた。「元気な姿を確かめないと」

「金沢」「彼の名前」。そして彼が継ぐと言っていた「家業の業種」。ネットで検索した。検索結果には、いくつか会社が上がってきた。ページを開いては事業内容を確かめ、だめ元で一件の会社に見当をつけて訪ねていった。

小さな町工場だった。建材が積み上げられていた。砂利道の奥に小さな事務所らしき建屋が見えた。窓越しに中をのぞく。汚れた作業着をまとった男性三人が難しい顔で設計図を前に話し込んでいる様子。その中の一人がふと顔を上げた。目が合う。互いに視線は動かない。彼は二人に何か言い残して、ゆっくりと席を離れた。少しずつ歩みを速めながら事務所の外に出てきた。

「小西か」

私は何も言わずうなずいた。駆け寄って来る彼の細めた目から光るものが頬を伝っていた。「小西、あー、懐かしい、懐かしい」。私は「元気にしていたか。会えてよかった、本当によかった」。感極まる思いで堅く手を握った。

互いに仕事中。少ない時間の中で、昔と同じように話ができた。彼の父は昨年亡くなったと

教えてくれた。「なんとか食っていけているよ」。彼が言う横で、同じ作業着姿の奥さんがお茶を入れてくれた。先代社長が亡くなり、名実ともに家業を継いだばかりの親友の目じり、眉間にはぐっと深いしわが刻まれていた。夢を語り合った二人は、20 年を経て、互いに会社を背負う立場になっていた。

ほんの半時間の再会だった。
私は急ぎタクシーに乗り込んだ。振り返ると、彼は見送っていた。たばこに火をつけると、ポケットに片手を突っ込んだまま。その姿は学生時代と同じだった。見えなくなるまで突っ立っていた。

20 年ぶりの親友の姿。彼の目に、私はどう映ったのだろうか? 今度、会う時に聞いてみようと思う。